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着物大事典
着物は洋服と異なり、インナーを何枚も重ね着するのが基本です。
インナーは着物の汚れを防ぐだけでなく、快適かつ美しく着物を着るために欠かせないアイテムです。ただし、手持ちのインナーや下着を代用する場合、さまざまな注意点があります。
今回は、着物のインナーを着る理由、基本となる4種類のインナー、インナーや下着における注意点について解説します。
着物の着付けの際、インナーが必要な理由を解説します。着物を長持ちさせ、かつ美しく着るために、インナーの役割を理解しておきましょう。
着物の下にインナーを着ると、汗や皮脂の汚れを吸収してくれます。着物が汗で汚れるとシミやカビの原因になるため、インナーによって着物を守り、長持ちさせることが可能です。
なお、着物と肌襦袢(はだじゅばん)の間に着る長襦袢(ながじゅばん)に縫い付ける半襟は、衿元を華やかに見せるだけでなく、首回りの汚れを防止します。また、長襦袢を保護する役割も兼ねるなど、さまざまな役割を持っています。
着物を美しく着るには、身体のラインを出さないように補正するのが基本です。着物の下にインナーを着用しないと、体型を補正できず、着物が着崩れする原因になります。
そのため、着物専用の肌着は厚手の生地で作られており、「こけし」のような体型に補正することが可能です。
基本となる着物のインナーは、和装ブラジャー、肌襦袢、裾よけ、長襦袢の4種類です。それぞれのインナーの役割、特徴について見ていきましょう。
和装ブラジャーとは、胸の凹凸を抑えてフラットな状態に補正する、ノンワイヤーのブラジャーのことです。
着物専用のものは補正機能が備わっており、胸のボリュームを適度に抑えてくれます。体型が補正できていていれば、適度な締め付けで着付けをしても着崩れしません。なお、吸水性や蒸散性に優れた素材のものは、胸元の汗染みが起きにくいメリットもあります。
和装ブラジャーが手元にない場合、さらしで代用することも可能です。さらしは汗をよく吸い肌に優しいため、脱ぎ着できない着物のインナーとして適しています。
なお、スポーツブラやナイトブラなど、胸のボリュームが出ないものであれば、和装ブラジャーの代用も可能です。ただし、綿素材は汗を吸う反面、湿気を放出しにくく、汗や熱気がこもりやすいので注意しましょう。
浴衣の下着に関して、以下の関連記事で詳しく解説していますので合わせてご確認ください。
浴衣の時に下着は必要?どうやって選べばよい?浴衣と下着の気になる関係
肌襦袢とは、素肌の上に直接着る肌着のことです。汗や皮脂を吸収しやすいよう、ガーゼや綿、麻などの素材で作られています。肌襦袢を着ることで夏は汗でべたつかず、冬場は適度な保温効果により快適に過ごせます。
なお、肌襦袢は上半身のみのセパレート、裾よけと一体化したスリップ、ワンピースの3種類があります。セパレートでは、上半身に肌襦袢、下半身は裾よけを着用します。
一方、スリップは上半身と下半身が一緒になっていますが、別々の素材を用いることもあります。ワンピースはファスナーやボタンで脱ぎ着できるため、着物に慣れていない人も着用しやすいのがメリットです。
裾よけとは下半身のインナーで、肌襦袢とセットで着用するのが基本です。下半身の汗を吸収するだけでなく、裾さばきがスムーズになり、歩きやすくなる効果もあります。
裾よけの種類は、腰巻き、パンツ、スカートの3種類です。昔ながらのタイプは腰巻きで、腰回りの余分な肉を補正することも可能です。パンツはステテコと似た形状で、脚の擦れを予防できます。一方、スカートはウエストにゴムなどを使用しており、簡単に着用できるのが特徴です。
なお、裾よけは、季節によって素材を使い分けることが可能です。夏場は麻、綿クレープ、ベンベルグ壁絽(かべろ)など、さらりとした着心地の素材が向いています。一方、
冬場は静電気が起きにくいベンベルグ(キュプラ)、吸湿発熱性・調湿機能に優れた素材が最適です。
長襦袢とは、肌襦袢と着物の間に着るインナーで、半襟が付いているのが特徴です。肌襦袢はあくまでも素肌に着る肌着で、長襦袢はジャケットの下に着るブラウスに例えられます。
肌襦袢の上に長襦袢を着ることで、着物を汚れから守る役割があります。また、汗を吸う肌襦袢と異なり、長襦袢はツルツルした生地で作られています。着物の滑りを良くすることで着崩れを防ぎ、動きやすくすることも長襦袢の特徴です。
なお、長襦袢は着物と同じ形状のため、着物の袖口や裾、衿元からわずかに見えることがあります。色使いやデザインに凝った長襦袢を着ることで、着物をおしゃれさに着こなすことも可能です。
なお、長襦袢を着ると空気がこもりやすく、夏場は暑くなることも少なくありません。夏の暑さ対策として、長襦袢を簡略化した「半襦袢(はんじゅばん)」や「二部式襦袢(にぶしきじゅばん)」を選んでもよいでしょう。
半襦袢とは、肌襦袢に半襟がついたインナーのことで、「うそつき襦袢」と呼ばれることもあります。肌襦袢の上に長襦袢を重ね着する必要がなく、1枚で着物を着られるため、暑い夏に最適です。
一方、二部式襦袢とは、上半身と下半身が分かれ、見た目は半襦袢に裾よけを合わせたものです。裾よけを省略できるため、暑い夏でも快適に過ごせます。
重ね着を基本とする着物は、インナーの選び方にいくつかの注意点があります。着物を快適、かつ美しく着るために、適切なインナーの選び方を把握しておきましょう。
着物は順序どおりに着付けすれば、冬場であっても特別な防寒対策は必要ありません。市販の発熱インナーに貼るカイロなど、防寒対策しすぎるとかえって具合が悪くなることがあるので注意が必要です。
また、貼るカイロは低温やけどのリスクがあるうえに、着物や長襦袢が傷みます。カイロは貼らないタイプのものを、手を温める程度に使用しましょう。
なお、足元の冷えを防ぎたい場合、足袋の下にソックスやストッキングを履くのがおすすめです。脚全体の冷え対策には、裾から見えない丈のレギンスを着用するとよいでしょう。
ただし、市販の発熱インナーを着る場合、襟ぐりが開いたものや袖が短いものなど、衣紋や袖口から見えないものを選びましょう。
先述のとおり、季節に合った素材のインナーを選ぶと快適に過ごせます。
夏場は吸水性や発散性に優れた、麻、綿麻、綿麻ポリエステルなどの素材がおすすめです。冬場は温かい素材の肌襦袢や、市販の発熱インナーを選びましょう。
和装用のショーツも販売されていますが、着物を着る機会が少ない方は手持ちの下着でも代用できます。ただし、下着選びを失敗すると、着崩れや着物に響くので注意が必要です。
股上が深い下着を着用すると、腰ひもの部分と重なることで着崩れしやすくなります。トイレでの下着の上げ下げも大変になるため、できるだけ股上が浅いタイプを選びましょう。
また、下着のラインが着物に響かないよう、ヒップがレースのもの、縫い目のないもの、Tバックなどを選ぶことも重要なポイントです。
白などの色が淡い着物はショーツの色が透けるため、肌のトーンに合わせたベージュの下着を選びましょう。生理になった場合、サニタリーショーツの上にボトムやペチコートなどを重ねると、万が一漏れたとしても安心です。
着物の下着に関して、以下の関連記事でも詳しく解説していますので合わせてご確認ください。
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基本となる着物のインナーは、和装ブラジャー、肌襦袢、裾よけ、長襦袢の4種類です。着物のインナーは汚れから着物を守るだけでなく、体型を補正して着崩れを防ぐ効果もあります。
市販の発熱インナーなどで代用する場合、着物から見えないように注意しましょう。ただし、快適に着物を着られるよう、季節に合った素材を選ぶことも大切です。
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