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着物大事典
気に入った色や柄を自由に選ぶのは着物の楽しみ方の一つですが、染め方の種類や染料を知ると、もっと着物が楽しくなります。
美しい着物の模様やデザインを描くための「染め」には、日本古来の伝統と美しさがたくさん詰まっています。知れば、今までとは違った観点で着物を見ることができますよ。
今回は、染めの種類や技法、染料についてわかりやすくご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
着物の染めには、「先染め」「後染め」の2種類があります。まず、先染めは染めた糸で織るため「織りの着物」、後染めは白生地に色をのせますので「染めの着物」と呼ばれています。どちらも染めることに違いはありませんが、染める順番が違うのです。
・先染め(織りの着物)
前述の通り、あらかじめ染めた糸、繊維を使って布地を織る方法を「先染め」と呼びますが、その特徴は、深い色味と味わいのある素朴さです。また、メリットとして糸に染料を染み込ませているため、色落ちがしにくいことが挙げられます。
・後染め(染めの着物)
一方の後染めは、白い糸で白い布を織り、それぞれの技法で色や柄を付けます。先染めの糸と比べて、糸自体も上質であるため、出来上がった布地は上質なものになります。
大きなメリットとして、色や柄を自由に表現できる点が挙げられます。また、白生地に戻したうえで、別の色に染め直したり紋を入れたりすることも可能です。
・着る場面と帯の組み合わせ
先染めの着物はカジュアルな場面で着ることが多く、後染めの着物はフォーマルな場面で着ることが多いので、染めの着物が格上、織りの着物が格下とされていますが、帯の場合は反対になるのです。織りの帯が格上、染めの帯が格下とされていますので、ぜひ覚えておきましょう。
先染め、後染めともに、染めるためには染料が必要です。昔ながらの味わいのある天然染料と近年の化学染料とでは、色合いや扱いやすさがそれぞれ異なります。ここでは、天然染料と化学染料の種類や特徴を見ていきましょう。
・天然染料
天然染料とは、自然界に存在する動植物や鉱物から抽出される染料です。有名な植物系染料としては、藍(あい)、茜(あかね)、紅花(べにばな)などが挙げられますが、聞いたことがある人も多いでしょう。
動物染料では、巻貝を使う「貝紫染め(かいむらさきぞめ)」が挙げられますが、化学染料が発達した現在では、あまり見かけなくなっています。また、鉱物染料には泥を使う「泥染め(どろぞめ)」があり、こちらは現在も奄美大島で特産の大島紬(おおしまつむぎ)を染める際に使われています。
・化学染料
化学染料は科学的に合成された染料で、合成染料や人造染料と呼ぶこともあります。この化学染料は、明治時代に海外から輸入されたことを機に広く使われるようになりました。
化学染料のメリットは、大きく分けて「安定性」「低コスト」の2点が挙げられます。天然染料とは異なり、一定の色に染めることが可能となります。また、低コストかつ長期保存も可能という扱いやすさもあり、広く普及しています。
ここからは着物の染め方の種類をご紹介します。染め方によって着物の格式も異なりますので、ぜひ知っておきましょう。
・友禅染め(ゆうぜんぞめ)
友禅染めは、白生地にのりで模様を描き、さまざまな色を染める技法です。日本の三大友禅染めとして、京友禅(きょうゆうぜん)、加賀友禅(かがゆうぜん)、江戸友禅(えどゆうぜん)が挙げられます。この友禅染めには、模様の書き出しから染めの工程までを手作業で行う「手描き染め」と、型紙を使用する「型友禅」の技法があり、絵画のような表現が特徴的です。
・江戸小紋(えどこもん)
江戸時代に諸大名や武士が正装として着用した裃(かみしも)の染めにより、発達したのが江戸小紋です。昔から、三重県で主に生産されている伊勢型紙を使って染められていますが、一見すると無地に見えます。しかし、近くで見るととても繊細な柄であることに驚かされるでしょう。この江戸小紋は、フォーマルな場面では着用できませんが、例外として鮫(さめ)、行儀(ぎょうぎ)・角通し(かくどおし)という種類は、略礼装として着用が可能です。
・絞り(しぼり)
着物の絞りとは、奈良時代から続く染色技法の「絞り染め」を意味します。使う糸や器具、技法によって呼び名が異なり、京都の伝統工芸品に指定されている「京鹿の子(きょうがのこ)絞り」や、愛知県名古屋市で生産される「有松・鳴海(ありまつ・なるみ)絞り」などが挙げられます。
一般的な絞りの着物は格下とされていますが、布全体を絞りで染める「総絞り(そうしぼり)」の振袖や訪問着は、フォーマルな場面でも着用できます。また、染め抜き紋が入れられない総絞りの訪問着でも、縫い紋を入れることによって略礼装として着用が可能です。
・型染め(かたぞめ)
型紙を使用して染める「後染め」の技法の総称です。型を用いて染料を入れる方法と、模様を彫った型紙を置き、さらに防染糊(ぼうせんのり)を置いて彩色する方法があります。前述の江戸小紋や、複数の型紙を使う紅型小紋(びんがたこもん)も、型染めの技法の一種です。
・紬(つむぎ)
紬は、糸の段階で染色する先染めの着物で、紬糸を織り上げて作られる絹織物です。紬のなかでも結城紬や大島紬は高級品として知られています。普段着からおしゃれ着まで幅広く使用されていますが、基本的にフォーマルな場では着用しないのが一般的です。
・上布(じょうふ)
上質な布を意味する言葉が、上布(じょうふ)です。細い麻糸を平織で織り上げた高級麻織物であり、地域によって異なる技法で織られています。例えば、滋賀県湖東地域の「近江上布(おうみじょうふ)」、沖縄県八重山群周辺の「八重山上布(やえやまじょうふ)」、沖縄県宮古島の「宮古上布(みやこじょうふ)」などが代表的です。
・縮(ちぢみ)
強くよりをかけた糸で布を織り上げ、加工してシワを施した織物です。絹や麻、木綿を使用している場合が多いため、主に夏用の着物とされます。2009年にユネスコ世界文化遺産に登録された「小千谷縮(おぢやちぢみ)」、伝統的工芸品に指定された「本塩沢(ほんしおざわ)」などは夏のカジュアルなお出かけにぴったりの素材です。
・三纈(さんけち)
三纈とは、ろうを使って防染して染める蝋纈(ろうけち)染め、2枚の板で布を挟み、折り目や重なり部分を防染して染める夾纈(きょうけち)染め、前述した絞り染めの纐纈(こうけち)染めの総称です。いずれも日本で古くから行われてきた染色技法となります。
ここまで、日本の伝統的な染めの技法を見てきましたが、近年では印刷技術の発展によって、綿や麻、ポリエステル生地などにインクジェットプリンタで印刷した着物も登場しています。これらの着物は、生地が薄いタイプが多い一方、手頃な価格でカジュアルに着物を楽しめるメリットもあります。
例えば、特別な日や冠婚葬祭には手描き染めの着物、雨の日のお出かけにはポリエステルの生地の着物など、シチュエーションに合わせて使い分ければ、より着物の楽しみ方の幅が広がるでしょう。
今回は、着物の染料や技法、染めの種類などをご紹介しました。ご紹介しきれなかった伝統的な染め方や産地ごとの技法もありますので、ご興味があれば調べてみてはいかがでしょうか。お住いの地域でも伝統の染物があるかもしれません。
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