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着物大事典
石川県といえば加賀友禅といわれるほど、自然美を描き出す素晴らしい技法が特徴的ですが、それ故に高価なお着物としても有名です。
加賀友禅の成り立ちと特徴を知ることで、金沢のまちを散策される時にお着物に対する関心や興味を持っていただけたら、また違った楽しさを味わっていただけると思います。
友禅という言葉は「糊で防染した、きもの模様の技法」の意味であり、その技法の創始者である宮崎友禅斎の名前が由来とされています。
京友禅も加賀友禅も宮崎友禅斎が基礎を作りましたが、時代の流れとともにそれぞれの特徴が生まれました。加賀友禅は落ち着きのある写実的な草花模様を中心とした絵画調の柄であるのに対し、京友禅はよどみがなく美しい集合配列模様を特徴としています。
それは加賀の武家文化、京の公家文化それぞれの社会背景よるものと考えられます。
加賀友禅の歴史は、今からおよそ500年前、加賀の国独特の染め技法であった「梅染」にさかのぼります。17世紀中頃には、いわゆる加賀御国染(おくにぞめ)と呼ばれる兼房染や色絵・色絵紋の技法が確立されました。なかでも色絵紋の繊細な技法は加賀友禅の原点になったとも言われています。
これらの染め技法がほぼ確立した後、加賀友禅の名の由来となる宮崎友禅斎の登場によって、加賀友禅は大きな発展期を迎えます。友禅斎は江戸中期に京都から金沢の御用紺屋棟取・太郎田屋に身を寄せ、御国染の意匠の改善や友禅糊の完成など輝かしい加賀友禅の基礎を築き上げました。
加賀友禅の特色は、まず写実的な草花模様を中心とした絵画調にあります。華麗な図案調の京友禅と比べると、その武家風の落ち着きのある趣がよくわかります。
また、加賀友禅は五彩と言われる藍、臙脂(えんじ)、黄土、草、古代紫を基調とする紅系統を生かした多彩調であり、淡青単彩調の京友禅との違いがあります。
技法においても加賀友禅は、線の太さやぼかし、虫喰いなどの表現でアクセントを付け、自然美を巧みに描き出しています。京友禅が内側から外側にボカシてあるのに対し、加賀友禅では逆に外側から内側に向かってボカシてあるのが特徴といえます。
さらに技法のひとつ糸目糊があげられます。これは挿色の防線が主な目的ですが、水で洗いおとすと草花の葉筋や水の流れなど繊細な白い線が浮かびあがり、装飾効果を高めています。
加賀友禅は加賀百万石の武家文化の中で育ち、人間国宝に指定された木村雨山師をはじめ多くの名工が生まれ、全国的に著名な作家を輩出してきました。その伝統はいまも受け継がれ、数多くの作家が精力的に創作活動を行っています。
加賀五彩とは、藍、臙脂、黄土、草、古代紫の5色で、加賀友禅の基調になっているといわれます。
現代の加賀友禅作家は、加賀五彩に基づきながらも時代の好みや作家自身の個性を反映させて全体の配色を決めています。
・手描き友禅
加賀友禅の製作工程は主な工程だけで9つあり、そのすべての過程で熟練の高い技術が求められます。一点一点、根気と時間をかけて仕上げられる手書き友禅は、それゆえに高い価値を誇ります。
・板場友禅
模様を彫った型紙を使って染める手法で、型友禅や加賀小紋染とも呼ばれています。
高度な技による精緻で繊細な模様は、手描き友禅とは違った魅力と風合いで親しまれています。
現在では作家によっていろいろな雰囲気や特色をもった作品が作られています。
また、加賀友禅の独特の文様、色彩の特徴を模し、一部技法を省略し、合理化して廉価に量産されている着物は、 加賀調子の着物または加賀調と呼ばれ、加賀友禅とは区別して扱われています。
加賀調子の着物といっても決して粗悪品というわけではなく、型友禅の技法が用いられているということであり一般には判別が難しいようです。
いかがでしたか。今回は着物の似合うまち「金沢」が発祥の加賀友禅をご紹介致しました。
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