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着物大事典
京都名所特集と銘打ってご紹介するのは、京都にある神社仏閣の特徴や歴史についてです。細かくご紹介して、観光などの際に役立てていただきたいと考えております。第15弾の今回は酢屋(すや)と近江屋跡(おうみやあと)、幾松(いくまつ)です。
酢屋は河原町三条、木屋町通り近くに江戸時代の1721年に創業した材木商で、創業以来現在に至るまで、280年以上も木材の文化に携わっている老舗です。現在は創作木工芸品と千本銘木紹介を営業しています。幕末には六代目当主・嘉兵衛が材木業を営むかたわら、大坂から伏見、京都へと通じる高瀬川の輸送権を独占して運送業も営んでいました。家の前には高瀬川の舟入があり、川沿いには各藩の藩邸が建ち並んでいたため、酢屋は各藩との連絡や折衝に格好の地でありました。当主・嘉兵衛は龍馬の活動に理解を示して援助に力を注いだので、龍馬は近江屋に避難するまでこの酢屋に身を寄せていました。龍馬は2階の表西側の部屋に住んでおり、2階の出格子から向かいの高瀬川に向かってピストルの試し撃ちをしたといわれています。
この部屋は、現在は「ギャラリー龍馬」として運営されていて、龍馬にゆかりの品々が展示されています。また、ここには海援隊本部を置き、海援隊隊士や陸奥宗光など多くの志士も投宿しました。入口には「坂本龍馬寓居跡」の石碑が建っています。
龍馬が暗殺された11月15日には、毎年酢屋龍馬祭が行われるので、 いまも大勢の龍馬ファンか集まります。そのほか、11月から12月にかけては龍馬追悼展も催されて、龍馬の遺品や海援隊ゆかりの品々が公開されています。酢屋の前の小路は「龍馬通」とよばれ親しまれています。
1867年11月15日、龍馬は醤油商の近江屋で、同じく土佐藩士だった中岡慎太郎と歓談中に斬殺されました。龍馬はそれまで宿舎にしていた酢屋が幕府の役人に知られて身の危険を感じたため、土佐藩邸に近いここに移ってきたばかりでした。龍馬はこの頃、長州藩と薩摩藩との和解を図ったり、藩主の山内容堂を説いて大政奉還を建議させるなどに奔走していて、幕府の役人や新撰組に狙われていたのです。
近江屋では土蔵を改造して龍馬を隠し、いざというときははしごをつかって逃げられるようにしていたのですが、このときは二階で歓談中の不意をつかれてしまったのです。11月15日、十津川郷士と名乗る武士が数名訪ねてきました。郷士と名乗られたので、近江屋の下男の山田藤吉も油断して通してしまったといいます。郷士は龍馬と同じ勤皇派だったからです。藤吉が二階の龍馬に取り継ごうとしたとき、武士たちはいきなり藤吉を斬りつけて、2階に上がり、龍馬と中岡に斬りかかりました。当時のことを様々な意見がいまだに議論されていますが、確実な史料は無いため詳しいことは不明なままです。
実行犯は新撰組だといわれたが、こちらも不明。そのほか、土佐藩士説、紀州藩士説、薩摩藩士説などがありますが、いまでは京都見回組による犯行だという説が一番確かではないかといわれています。京都見回組とは幕府の役人で、会津松平容保の配下で京都の治安を守る組織です。新撰組とは見回る場所が異なっていました。現在、近江屋はなくなり、いまでは「坂本龍馬、中岡慎太郎 遭難之地」と記された石碑が建っているのみとなっています。近江屋跡は河原町蛸薬師下ルの塩屋町にあり、京都でも若者が行きかう繁華街です。この辺り一帯、三条通から四条通の河原町、木屋町界隈はいまでは京都でもっともにぎわい流行の先端をいく町ですが、当時は血気さかんな志士たちがこの界隈に住み、騒乱を起こしていた物騒な場所だったのです。龍馬を偲んで立ち寄るのはいかがでしょうか。
長州藩士の桂小五郎とその恋人で後に夫人となった幾松の住まいだった場所は、現在料理旅館となっています。江戸時代の1810年に建てられた情緒あふれる屋敷は国の登録有形文化財に指定されています。現在も高瀬川沿いの木屋町筋にあり、鴨川に面した客室からは東山や大文字山など京都の郊外が見渡せます。新撰組や幕府の役人から常に命を狙われていた小五郎は寓居を隠れ家とし、幾松は命がけでサポートし小五郎を救ったエピソードが数多く残されています。料理旅館となった幾松にも今も抜け穴や飛び穴、吊り天井、幾松が暮らした「幾松の部屋」には新選組に踏み込まれたとき小五郎をかくまったという長持ちが置かれ、往時の緊迫感を感じられます。
現在は料理を味わうことも、宿泊もでき、希望すると幾松や小五郎の話を聞くことができますので着物を着て当時の雰囲気をより身近に感じてみてください。
今回は幕末の英雄といわれる坂本龍馬のゆかりである酢屋・近江屋跡と尊王攘夷運動の中心で活躍した桂小五郎にまつわる幾松をご紹介しました。激動の時代といわれている幕末を日本のために駆け抜けた偉人たちを偲んで着物で聖地巡礼旅行をされてはいかがでしょうか。
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